●2009年6月
L size 1280x1024 87.3k |
|
M size 1024x768 57.2k |
ほら、みそかちゃん、驚かさないように、そーっと、そーっと…。 | |
そー……っ…。えいっ! | |
あー、惜しい!逃げられたー! | |
よう、何してるご両人、帰り道かね? | |
あ、つきひ姉も今帰り?せっかく梅雨だし、ちょっとねー。 | |
惜しくも捕まえ損なってしまいました。 | |
何を? | |
かたつむり。 | |
逆に器用だなおい!でんでん虫って虫じゃないぞ! | |
むしろ、蟲? | |
…な、なんか急にやらしいね、かれんちゃん…。 | |
だが、イマドキ無駄に潔癖な子供が多い中、かたつむりに臆することなく 捕まえようと言う好奇心は見上げたモノだ。細菌とか気をつけなよ。 |
|
さりげなく怖いこというなぁ…。 | |
あの、でしたら、つきひさん、捕まえてくださいよ。 | |
…やだ、気持ち悪いもん。 | |
うわあ!イマドキの子供だ! | |
それにそんなの、ウチの庭にいくらでもいるじゃない。こんな道端で捕らなくても。 | |
え、そうなんですか?い、行こうよかれんちゃんのウチ! | |
…殻のないタィプでも? | |
ぴしっ。 | |
効果的と聞いて、ビールを小さな器に入れて縁石の上に設置して一晩… 器の表層も見えないひしめき具合に、誰も触ることができなくなったと言う…。 |
|
み、未成年ばかりの家で、よくビール買えましたね…。 | |
常識的な部分へのツッコミで意識を無理矢理そらそうとしてるな…。 | |
し、塩!浸透圧!塩かければ手を汚さずに一網打尽じゃないですか! | |
…かけたよ、試しにまずちょっと。噂にたがわぬ溶けっぷりだったさ…。 みそか嬢、生物が瞬く間にその形状を失していく惨状を目の当たりにした経験は? |
|
ぶるぶるぶるぶるがくがくがくがく。 | |
…と言うわけで、誰も触れず今日に至るんだけど…ウチ来る? | |
ご欠席に○を。 | |
なんで殻のあるなしでこんなに不気味さが違ってくるんだろうな…。 | |
貝類でも、貝殻はあんなに綺麗なのに、中から貝肉がはみ出してる状態とか もう放送禁止レヴェルで気色悪いものねー。 |
|
…な、なんかやらしいよ、かれんちゃん…。 | |
ところでお二人さん、かたつむりなんか捕まえてどうするおつもりだったんだい? | |
塩かけてみようかと。 | |
この子達ッたら、もう! | |
ちーっす、おぉ、綺麗綺麗。 | |
おりょ、つきひタン、それに妹君とそのご友人まで。こんな雨の中遠路はるばる。 | |
いや、近いけどな。たしかいちとせんトコの境内ってあじさいが綺麗だったなーと。 ほら、二人とも、あじさいは埋められた人の養分を吸うと色が変わるんだぞ。 |
|
ほんとだ、ココだけ色が違うー。 | |
だ、だれを埋めたんですかいちとせさん…!? | |
ばれてしまっては仕方がない…貴様らにもあじさいの肥料になってもらうげしゅ! | |
いやああぁぁぁあ!! | |
まぁ、ぶっちゃけそこだけ種類が違うだけの話げしゅがね。 | |
そりゃそうだ。 | |
…まぁ、いちとせだから、本当のことがどこにあるかなんて。 で、あじさいも良いけど今日は別件があってな。 |
|
ん?ビールの容器なら昨夜裏庭に仕掛けましたげしゅよ?今から見に行く? | |
やめろおおぉぉぉ! | |
やめてえぇぇぇぇ! | |
……そ、そんなになんだ…。姉妹揃って絶叫するほど…。 | |
実は自分も怖くて裏庭に足を踏み入れられないんげしゅけど。 | |
ダメジャン。 | |
でもかたつむりなら、ほらその辺に。 | |
おー、いるよいるよみそかちゃん。 | |
ホント…あじさいの葉にかたつむりって、絵になるね。 | |
ウチの神社は四季を通じて必ず見所があるのがウリげしゅから。 | |
梅雨は四季には入らないぞ。 | |
あの、すこし捕まえて良いですか? | |
良いげしゅけど…なして? | |
子供ゆえの好奇心。 | |
幼さゆえの残酷さ。 | |
職業柄、命を無碍にする行為は推奨できましぇん! | |
まぁ、分かるけどね…でもさいちとせ、子供はこういう無邪気な行為を通じて 命の価値を理解するものだと思わないか? |
|
そうげしゅね…今の子供は、腫れ物に触るように自然に対しておっかなびっくりで、 肌を通じた理解と言うものを体得してないげしゅからね…。 |
|
中学生だてらが何か知ったようなこと言ってるよ。 | |
わ、ほらほら、みてみてかれんちゃん、捕まえた、捕まえちゃった! | |
良くやったみそかちゃん!、えいっ、あ、ほんとに角が反応して動いてるー。 えいえい、つんつん。 |
|
…か、かれんちゃん、今日は無闇にいやらしいね…。 | |
いちとせー。 | |
はいー、伯方の。 | |
用意がいいねこりゃまた! ほらほら、試してみようみそかちゃん! |
|
………。 | |
みそかちゃん?……泣いてるの? | |
…あ、ごめんね。この子、こんな不気味な姿で、得体の知れない殻を被って、 骨すらもなくって、でも、一生懸命生きてるんだよね…。こうやって角を出し入れして。 |
|
…うん。 | |
…もし自分が、突然手足の先から体を解かされて、ワケも分からないうちに 形をなくしちゃったらと思うと、命とか、心とか、どこにあるんだろうなって…。 |
|
ほらほら、いきなり自然体験教室が功を奏してるよいちとせ。 | |
開校の甲斐がありました。 | |
でも、間違いなく今この子は生きてるんだから、ソレを邪魔しちゃダメだよね…。 | |
……うん、そうだね、そうだよねみそかちゃん。…あじさいに帰してあげよう。 | |
…はい…元気でね、マイマイちゃん。 | |
もう名前付けてるし。 | |
しかしコレで二人も成長したんげしゅね…この場を提供した身として 感激に堪えません…!そんな君達に、是非コレを! |
|
なーに、いちとせさん? | |
今しがた、裏庭から持ってきたげしゅ。 | |
伯方のおぉぉ!! | |
ぎゃあああ!溶けるぅぅぅ!目の前で手の上で溶けていくぅぅ! ナントカしてくれでごわすつきひどん! |
|
こ、こっち来るなそんなの二度と見たくない!来るなああぁぁ!! | |
…あ、あはは、まったく…。 | |
ご、ごめんなさい、つい取り乱しちゃって…。 | |
あ。 | |
…なに?かれんちゃん。 | |
今の塩、マイマイちゃんにも。 |
back |